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お知らせ

第3章 GLP1製剤に関するよくある間違い

2023年07月10日

私たちはGLP1ダイエット注射サクセンダを取り扱っているクリニックです。GLP1ダイエットは、食欲を抑え、安全に太りにくい体質へと変えていきます。無理のない体重の減少を実感していただくために情報発信していきます。

 

サクセンダ0.6mgで痩せません。

サクセンダ0.6mgで、痩せると言い切っているのは、エビデンス(医学的根拠)を無視したPRであり問題です。多くの受診者の方々が、「毎日0.6mg打ってるのに痩せないです」と当院を受診されます。痩せないはずなのです、サクセンダ0.6mgで痩せるという科学的根拠は全くありません。0.6mgとは、アメリカ人に処方されたサクセンダの初期投薬量です。もし0.6mgで、多少なりとも体重が落ちたとすれば、それは元々「過食症ぎみ」の傾向があり、その過食が止まった時に体重が落ちたというだけのことです。

 

「脂肪分解作用がある」、「瘦せるホルモンである」

GLP1製剤に「脂肪分解作用がある」、「瘦せるホルモンである」というのは間違いです。サクセンダの作用機序を糖尿病専門医が説明すると、食欲抑制作用や胃排出速度抑制作用があるために、1回の食事摂取量は30%程度減少し、同時に約30%の摂取エネルギーも減るわけですから、確かに「痩せる」事に繋がります。しかし脂肪細胞に対する直接作用だけを考えると、単に痩せるホルモンとは言えません。

サクセンダが体内に入ると膵臓のβ細胞では、インスリン分泌を促し、脂肪合成を高めます。インスリンは脂肪を分解しません。サクセンダは膵臓のα細胞には、グルカゴンの分泌抑制作用を示します。ですから、サクセンダを投与すると、グルカゴン分泌が抑制され、脂肪が分解されにくくなります。ホルモンとしての脂肪細胞に対する作用だけを議論すれば、理論的に「痩せるホルモン」と呼ばれるはずがない作用機序を持つ製剤なのです。

 

痩せるGLP1 と痩せないGLP1

サクセンダは中枢性の食欲抑制作用があると考えられています。脳の視床下部に受容体があり、皮下注射されたGLP1製剤は脳の血管に到達し、そこにあるBBB(Blood Brain Barrier, 脳血流関門)という関門を通過し、脳細胞に到達します。そのため、サクセンダは「痩せるGLP1」と言われる製剤です。

「痩せないGLP1」と言われるのは、食欲ホルモンとして、脳の食欲中枢に到達しにくいGLP1製剤になります。一般的なのはトルリシティ(一般名:デュラグルチド)などが有名です。痩せないGLP1は必要ないのでは?と考えてしまいますが、それは違います。それはそれで重要なのです。一般的に病気があると痩せることが多く、痩せ易い様な状況にある時は、むしろ痩せないGLP1製剤のほうが望ましいのです。特に、循環器分野などの心不全を抱える患者さんでは、痩せる事自体を医師は恐れることがあります。糖尿病をもつ高齢者も痩せたくないと言われる方が多いです。そのため、あえて痩せないGLP1を処方することが、糖尿病外来では日常的に行われています。